「会社設立したからには自分への給与(役員報酬)を高く設定したい」と考えるひとり社長は多いでしょう。
しかし、安易に金額を上げると、会社の資金繰りが一気に悪化するリスクがあります。
役員報酬を高く設定する際は、まず「社会保険料の会社負担分を含めた資金繰り表」でキャッシュフローを把握することが最優先です。
その上で、社会保険の手続き、法人税上の定期同額給与のルール、必要に応じた登記手続きを確認し、専門家へ相談した上で決定しましょう。
単なる節税ではなく、会社を継続させるための実務的な判断基準を整理します。
役員報酬の決め方で失敗しないための判断順序
ひとり社長が役員報酬を決める際、「いくらなら所得税や法人税が安くなるか」を優先しがちです。
しかし、実務で最も重要なのは「会社の現預金がショートしないか」という資金繰りの視点です。
役員報酬決定の優先順位
- 資金繰り:役員報酬と社会保険料を払っても会社に現金が残るか
- 社会保険料:会社負担分を許容できるか
- 税務ルール:定期同額給与の要件を守れるか
- 節税効果:個人と法人の税金バランスは妥当か
役員報酬を高くすると、個人の所得税・住民税だけでなく、会社が負担する社会保険料も増えます。
「役員報酬を上げれば節税になる」という話は、会社に十分な資金余力があることが前提です。
その上で、役員報酬の額面だけでなく、社会保険料の会社負担分も支払えるか確認してください。
社会保険料と資金繰り:給与増額で手元資金が減るリスク

株式会社などの法人事業所は、社長一人の会社であっても、原則として健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。
役員であっても、法人から報酬を受けて勤務実態がある場合は、社会保険の被保険者となる可能性があります。
社会保険料の見えないコスト
役員報酬を検討する際、額面だけを見てはいけません。
会社は健康保険料や厚生年金保険料を本人と分けて負担します。保険料率は都道府県や年齢等で異なるため、正確な金額は保険料額表で確認しましょう。
社会保険の手続きにも期限があります。
新たに被保険者となる場合は、原則として事実発生から5日以内に「被保険者資格取得届」を提出します。
| 確認項目 | 内容・期限 |
|---|---|
| 社会保険の適用 | 法人事業所は原則として適用対象 |
| 資格取得届 | 事実発生から5日以内 |
| 保険料の負担 | 本人分と会社負担分が発生 |
税務と登記の落とし穴:定期同額給与と役員変更登記
役員報酬は、いつでも好きな時に自由に変えられるわけではありません。
法人税法上、役員報酬を会社の損金にするためには、原則として「定期同額給与」のルールを守る必要があります。
主な手続き・期限
- 法人設立届出書:設立の日から2か月以内に税務署へ提出
- 報酬額の変更:原則として事業年度開始から3か月以内など、定期同額給与の要件を確認
- 役員変更登記:役員の就任・退任・重任などがある場合、原則として事由発生から2週間以内
役員報酬を高くするだけで登記が必要になるわけではありません。
ただし、役員の就任・退任・重任などがある場合は、役員変更登記が必要です。
登記を怠ると、代表者が100万円以下の過料に処される可能性があります。
また、期中での恣意的な増額や減額は、税務調査で損金として認められない原因になります。
設立直後であれば、「法人設立届出書」を設立の日から2か月以内に提出しているかも確認してください。
役員報酬を決める前に確認すべき5つの項目
役員報酬を決定・変更する前に、以下の項目を確認しましょう。
- チェック1:今後1年間の資金繰り表を作成したか
- チェック2:社会保険料の会社負担分を予算に入れているか
- チェック3:報酬変更の時期は定期同額給与のルールに沿っているか
- チェック4:役員変更がある場合、2週間以内の登記申請が必要か確認したか
- チェック5:税理士等に、社会保険料と税額の試算を相談したか
役員報酬の金額設定に、唯一絶対の正解はありません。
会社の業績、個人の生活費、社会保険料、将来の融資審査など、複数の要因が絡みます。
特に資金繰りに不安がある場合や、大きな増額を行う場合は、独断で決めずに専門家へ相談してください。
公式情報については、日本年金機構、法務局、国税庁のウェブサイトで最新情報を確認しましょう。


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